Studio Oneで覚える! ギター打ち込みガイド
ギターにはコードストロークやブリッジミュートなど多彩な技法があり、これらを打ち込みで再現する場合は、ピッチベンドやボリューム(CC#7)の使い方を覚えておく必要があります。
そこでこの記事では、Studio One付属のマルチ音源「Presence」を使用して、各奏法ごとにギターを打ち込むためのコツやポイントを詳しく解説します。
この記事を読むと、ギターの打ち込み方が分かるようになると思うので、ギターの打ち込みを覚えたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
ギター打ち込みの基礎知識
ギターの打ち込みを始める前に、最低限必要なギターの基礎知識を身につけましょう。ギターの基礎知識を身につけることで、よりリアルなギターを打ち込めるようになります。
身につけておきたいギターの基礎知識は以下の3つです。
1.ギターの音域
2.ギターのボイシング
3.ピッチベンドとボリューム(CC#7)
1.ギターの音域
ギターには6本の弦が張られており、各弦の音域は以下のようになっています。
ギターは6弦の音がもっとも低く、右へ行くほど音が高くなります。
ギターは同じ音が出せる場所が複数あります。ギターを打ち込むときは「何弦の音か?」を意識しながら入力しましょう。
●2つの音名表記「国際式とヤマハ式」
音名の表記方法には国際式とヤマハ式があります。国際式は真ん中の「ド」が「C4」なのに対し、ヤマハ式は真ん中の「ド」が「C3」になっています。
音名の表記方法はDAWソフトによって異なるので、複数のDAWソフトを使う場合はMIDIの打ち込む位置に気を付けましょう。
2.ギターのボイシング
ギターを打ち込むときは、ギター特有のボイシングを知っておく必要があります。ギターは指の本数や長さの関係で物理的な制約があり、ピアノほど自由が利きません。
たとえば、Cadd9のコードを演奏する場合、ピアノでは簡単に押さえられますが、ギターでは指が届かずに押さえることができません。
ギターを打ち込むときは「指で押さえられるか?」を意識して入力しましょう。
3.ピッチベンドとボリューム(CC#7)
ギターの奏法はピッチベンドとボリュームを使って再現します。
・ピッチベンド
・ボリューム(CC#7)
ピッチベンド
ピッチベンドは音の高さを変化させるパラメーターです。ギターの打ち込みではスライド奏法やチョーキングなどを再現するときに使用します。
ピッチベンドの最大変化量は使用する音源によって異なり、今回使用するマルチ音源の場合は「ベンドレンジ=2」になっています。
そのため、音程を半音上げる場合は「0.50」、全音下げる場合は「-1.00」と設定します。
ボリューム(CC#7)
ボリュームは音量を変化させるパラメーターです。Studio Oneではマスターゲインと呼ばれており、音量が減衰するハンマリングやブリッジミュートなどを再現するときに使用します。
マスターゲインの初期値は「127」になっており、この値が小さくなるほど音量が下がります。
●マスターゲインを追加する
1.マスターゲインを追加する場合は、左側の「…」アイコンをクリックします。
2.「Master Gain(CC 7)」を選択し、「追加」を押しましょう。
3.マスターゲインが追加されました。
ギター音源を準備する
打ち込みで使用するギター音源を準備します。今回はStudio One付属のマルチ音源「Presence」を使ってみましょう。
1.ブラウザからインストゥルメントを選択します。
2.「PreSonus」→「Presence」→「Artist Instruments」→「Guitar」を選びましょう。
3.「Guitar」内にある「Clean Guitar」を選び、アレンジビューにドラッグ&ドロップします。
4.クリーンギター音源がセットされたプラグイン音源「Presence」が表示されました。
5.今回は「ベンドレンジ=12」で使用します。ベンドレンジの数値をクリックして、値を変更しましょう。
6.クリーンギター音源のベンドレンジが「12」に変更されました。
7.クリーンギター音源の準備ができたら、次はディストーションギター音源を準備します。
8.「Guitar」内にある「Distorted Gtr」を選び、アレンジビューにドラッグ&ドロップします。
9.ディストーションギター音源がセットされたプラグイン音源「Presence」が表示されました。
10.今回は「ベンドレンジ=12」で使用します。ベンドレンジの数値をクリックして、値を変更しましょう。
11.ディストーションギター音源のベンドレンジが「12」に変更されました。
12.これでギター音源の準備が整いました。
ギターを打ち込もう!
ここでは、ギターの打ち込み方を奏法ごとに解説します。
コードストローク
コードストロークは指でコードを押さえて、「ジャラ~ン」と弾く奏法です。この奏法は腕を振り子のように振りながら、ダウンピッキングとアップピッキングを交互に使って演奏します。
コードストロークの打ち込み【Clean Gt】
コードストロークはMIDIノートの発音タイミングをズラして打ち込むことがポイントです。こうすることで各弦の音が鳴るまでに時間差が生まれ、ギターらしさを表現できます。
そして、もう一つ大切なことはピッキングの再現です。コードストロークはダウンピッキングとアップピッキングを交互に使って演奏するので、これも打ち込みで再現する必要があります。
ダウンピッキングの場合は低い音から弾くので、以下のように入力します。
アップピッキングの場合は高い音から弾くので、以下のように入力します。
コードストロークはコードが変わるタイミングで一瞬音が途切れます。コードの変わり目は少し間を開けておき、ギターらしさを表現しよう。
アルペジオ
アルペジオはコードを分散させて弾く奏法です。
アルペジオの打ち込み【Clean Gt】
アルペジオはもう一度同じ弦を弾くか、コードが切り替わるまでMIDIノートを伸ばすことがポイントです。こうすることで音が重なり、アルペジオがキレイに聴こえます。
ベロシティはコードの最高音を1番大きくし、ルート音を2番目に大きくします。そして、残りの音は適度にバラつかせて、均一にならないように入力しましょう。
そして、コードが切り替わるタイミングで一瞬音は途切れるので、コードの変わり目は少し間を開けておきましょう。
ハンマリング
ハンマリングは弦を弾いた後、別の指で弦を叩くように音を出す奏法です。この奏法は低い音から高い音へ繋げる時に使用します。
ハンマリングの打ち込み【Clean Gt】
ハンマリングはピッチベンドとマスターゲインを使用して打ち込みます。ピッチベンドでは音程を上げて、マスターゲインではハンマリング時の音の減衰を表現します。
今回はピッチベンド値「0.17」に設定し、「ソ」の音を「ラ」に変化させています。マスターゲインは「100」に設定し、音の減衰を再現しています。
プリング
プリングは押さえている弦を引っかくように離して、音を出す奏法です。この奏法は高い音から低い音へ繋げる時に使用します。
プリングの打ち込み【Clean Gt】
プリングはピッチベンドとマスターゲインを使用して打ち込みます。ピッチベンドでは音程を下げて、マスターゲインではプリング時の音の減衰を表現します。
今回はピッチベンド値「-0.17」に設定し、「ラ」の音を「ソ」に変化させています。マスターゲインは「100」に設定し、音の減衰を再現しています。
スライド
スライドは弦を弾いた後、弦の上を指で滑らせながら音程を変化させる奏法です。この奏法はグリッサンドとよく似ていますが、こちらは到達地点がしっかりと決められています。
スライドの打ち込み【Clean Gt】
スライドはピッチベンドとマスターゲインを使用して打ち込みます。ピッチベンドでは音程を変化させて、マスターゲインではスライド時の音の減衰を表現します。
今回は「ソ」の音を「ラ」に変化させるため、ピッチベンドとマスターゲインは以下のように設定しています。スライドは半音単位で音程が変化します。経過音も忘れずに入れましょう。
スライドは経過音を入れるタイミングがとても重要です。経過音を入れる際は音を聴きながら、タイミングを調整しましょう。
グリッサンド
グリッサンドは弦を弾いた後、弦の上を指で滑らせて音程を変化させる奏法です。この奏法はスライドとよく似ていますが、こちらは到達地点が決められていません。
グリッサンドの打ち込み(Distortion Gt)
グリッサンドはピッチベンドとマスターゲインを使用して打ち込みます。ピッチベンドは音程を変化させ、マスターゲインはグリッサンド時の音の減衰を表現します。
ピッチベンドは同じ間隔で半音ずつ下がるように設定し、グリッサンド時の音程変化を再現します。
マスターゲインはピッチベンドと同じ間隔で音量を設定し、グリッサンド時の音の減衰を表現します。
グリッサンドの打ち込みを終えたら、ピッチベンドとマスターゲインの値は元に戻しておきましょう。
ビブラート
ビブラートは弦を弾いた後、押さえている弦を上下に動かし、音を揺らす奏法です。
ビブラートの打ち込み
ビブラートはピッチベンドを使用して打ち込みます。上の画像のようにピッチベンド値「0」の位置から上方向に波を作り、音を揺らします。
この時、ピッチベンドの値は半音を超えないように設定しましょう。
●直線入力を上手く活用しよう!
ピッチベンドを細かく書き込む場合はペイントツールの「直接入力」を上手く活用しましょう。直接入力を使用することで、下図のように綺麗なピッチベンドが簡単に描けます。
カッティング
カッティングはストローグとブラッシングを組み合わせて、歯切れのよいリズムを刻む奏法です。
カッティングの打ち込み【Clean Gt】
カッティングはブラッシング部分のMIDIノートを短くすることがポイントです。MIDIノートの長さは「00.00.10」ぐらいに設定するとよいでしょう。
ベロシティはストローク部分よりも少し値を下げておき、差を付けておきます。今回はストローク部分のベロシティ値「100」、ブラッシング部分のベロシティ値「70」に設定しています。
そして、もう一つ大切なことはピッキングの再現です。今回は以下のようにダウン&アップを繰り返しているので、こちらも打ち込みで再現する必要があります。
ダウンピッキングの場合は低い音から弾くので、以下のように入力します。
アップピッキングの場合は高い音から弾くので、以下のように入力します。
ブリッジミュート
ブリッジミュートはピッキングする方の手をブリッジに置き、弦に軽く触れながら弾く奏法です。この奏法はギターにディストーションをかけて、パワーコードと合わせてよく演奏されます。
ブリッジミュートの打ち込み【Distortion Gt】
ブリッジミュートはマスターゲインを使用して打ち込みます。マスターゲインで音量が早く減衰するように書き込み、ブリッジミュート時の音の減衰を表現します。
音量の減衰は鳴り始めから20%あたりの位置でスタートさせ、半分程度まで減衰させます。今回はマスターゲイン値「127」からマスターゲイン値「40」まで減衰させました。
そして、もう一つ大切なことはピッキングの再現です。今回は以下のようにすべてダウンピッキングで演奏しているので、こちらも打ち込みで再現する必要があります。
普通に演奏する部分は以下のように入力します。パワーコードは2音だけなので、打ち込む位置は同じで構いません。ベロシティ値だけ差を付けておきましょう。
ブリッジミュート部分は以下のように入力します。ベロシティ値は普通に弾く部分よりも低く設定し、差を付けておきましょう。
チョーキング
チョーキングは弾いた弦を指で押し上げて音程を変化させる奏法です。音程を上げる動作はチョークアップ、音程を戻す動作はチョークダウンと呼びます。
チョーキングの打ち込み【Clean Gt】
チョーキングはピッチベンドを使用して打ち込みます。チョークアップ時は音程が上がるように書き込み、チョークダウン時は音程が戻るように書き込みます。
今回は「ソ」の音を「ラ」に変化させているので、ピッチベンドは以下のように書き込みましょう。
まとめ
今回はStudio One付属のマルチ音源「Presence」を使用して、奏法別にギターを打ち込むコツやポイントを詳しく解説しました。
ギターを打ち込めるようになると、リアルなギターパートが作れるようになります。本章を読み終えたら、各自でいろんなギターパートを作ってみましょう。
Studio Oneの使い方講座では、ギター以外にも様々な楽器の打ち込み方を解説しています。他の楽器の打ち込み方にも興味があるかたは、以下の記事もあわせてご覧ください。